成果出版
 

王広濤『日中歴史和解の政治学――「寛容」と「記憶」をめぐる戦後史』,明石書店

アジア太平洋戦争の終結から70数年。
敗戦で焦土と化した日本。戦争終結に伴い、日本の植民地支配から解放された中国。1972年に日中国交正常化により、日本と中国は新たな関係を結び共に歩み始めるはずだった――。それから50年、日本と中国の歴史認識をめぐっては深い断絶があり、それが日中間の政治·外交に大きな影響を及ぼしている。そもそも両国の「歴史認識」の溝はどう生まれ、どのように広まったのか? そしてなぜここまで膠着化した状態となってしまったのか? 日本と中国、米国の当時の外交資料を駆使して、歴史認識問題の根を掘り起こしていく。本書は、日本と中国が真の意味で「歴史和解」を果たすために、そして日中関係を再考するためのこれからの必読書となるだろう。

◆目次
はじめに

序章 なぜ日中歴史和解研究なのか
第1節 本書の問題意識
第2節 本書の分析枠組み
1 先行研究:予備的考察
2 分析枠組み:国内政治への注目
3 研究方法
第3節 本書の構成

第1章 歴史和解の政治学――分析概念の抽出
第1節 歴史和解とは何か
1 和解の定義と類型
2 分析概念の抽出
第2節 寛容と反省の限界
1 寛容、正義と和解の間
2 寛容の限界と射程
3 中国における寛容の意味
4 寛容の対象:日本の反省
第3節 記憶と忘却の弁証法
1 記憶と忘却のしかた
2 歴史と記憶の間
3 日中関係における記憶と忘却
小括

第2章 「友好」と「寛大」――中国の対日戦争責任区別論と賠償政策
第1節 「戦争責任区別論」の提出:蔣介石と毛沢東
1 蔣介石の「戦争責任区別論」
2 毛沢東の「戦争責任区別論」
第2節 国民政府と対日戦争賠償政策
第3節 中華人民共和国の成立と対日賠償政策
1 「人民友好外交」の誕生
2 対日戦争賠償政策に関する中国側の態度
3 対日戦争賠償放棄に関する政府内部決定
4 田中訪中と国民説得・教育活動
小括

第3章 「 利益」と「道義」――日本の戦争賠償問題と対中政策
第1節 アメリカの対日賠償政策とサンフランシスコ講和
1 アメリカの対日賠償政策の形成と変容
2 サンフランシスコ講和会議と戦争賠償問題
第2節 戦争賠償に関する日本の賠償認識と対応
1 日本政府の積極的対応
2 日本国内における賠償認識の諸相
3 戦争賠償問題と戦争責任
第3節 戦争賠償問題と日本の中国政策
1 戦争賠償問題の実態と本質
2 戦争賠償問題と「日華条約」
3 戦争賠償問題と対「中共」政策
小括

第4章 「忘却」と「想起」――中国における「南京大虐殺」の語り方
第1節 呼称からの検討
第2節 「南京大虐殺」をめぐる駆け引き
1 戦中における国民政府と共産党の記憶
2 国共内戦期における「南京大虐殺」の記憶
第3節 新中国の成立と「南京大虐殺」の記憶
1 「他者批判」のための想起
2 「人民友好外交」の代償
3 「記念儀式」の象徴としての「南京大虐殺」
小括

第5章 「 隠匿」と「加害」――日本における「南京大虐殺」の語り方
第1節 南京と広島:加害と被害の相殺?
第2節 戦時期における「南京事件」の隠匿
第3節 戦後における「南京事件」の再発見と忘却
1 占領期における「南京事件」
2 「一九五五年体制」の成立と加害記憶の断絶
3 「南京大虐殺」の想起と論争の開始
4 「南京事件」の歴史問題化と政治化
小括

終章 日中歴史和解の可能性と展望
第1節 事例の比較と検討
第2節 現実政治とナショナリズム
第3節 課題と展望

あとがき

引用·参考文献
事項索引
人名索引
著者紹介

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